sound village
 


「あ。そうだ。
二人とも、今晩時間無い?

今晩、ムコウの社員と懇親会の
予定なんだけど…柏木君だけじゃ
通訳が間に合わなくてね。
助けて欲しいんだけど。」

「別に俺はいいけど。
っつーか、誰が来てるんだ?
何人か研修に来るって話しか
聞いてなかったな。」

“お前知ってる?”と
神島が目でたずねてくるが…

「…神島が知らないのに
俺が知っていると思うのか?」

俺にそんなコミュニケーションを
とる様な相手が居ると思うの
だろうか?…と訝しむ。

「開き直るな。何でコートを出たら、
途端に、コミュニケーションを
取れなくなるんだよ。斐川は。」

呆れながら、会計を済ませ
音村係長の弁当を手にした神島が
店の扉を開けた。

ムワッとした空気がまとわりつく。

「グヘェ…」
「あっぢぃ…」

湿度の高い空気にやられた神島に
車のキーを出すようジェスチャーする。

「車はどこに停めてる?」

「市営駐車場。地下だし
ちょっとは涼しいだろ。
っで、斐川どうすんの?通訳。」

ちっ…覚えていたか。
有耶無耶にしてやろうと
思っていたのに。

「…気が向かない。」

以前、同期会というのに、かつて
一度連れて行かれたが、女性社員の
婚活丸出しの売り込みに
辟易として二度と参加していない。

その時の女子社員の半分が
総務部と人事部にいるのだ。
嫌な未来しか見えない。



 







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