sound village
「温かい…♪うわぁ…良い香り…
お昼ごはん…先に食べようかな♪」
出汁巻き玉子に、完全に
興味を奪われた音村係長は
目の前で、結構ガチモードで
自己と葛藤している。
…音村係長は、女性にしては、
食べるのが早い方だとは思うけど…
顎も小さいし、飲み込むのが
下手くそな人だから、俺達みたいに
早くは食えないしな。
午後の予定とか考えたら
飯食うタイミングも考えるんだろうな。
「音村ぁ~」
弁当の入ったビニール袋を
目の前に吊り下げた係長を
部長代理が面倒くさそうに呼んだ。
間延びした声で、扇子を仰ぎながら
音村係長に告げる。
「管理部門がな。移管先の連中を
接待するらしい。神島と斐川を
同行させたいと依頼があった。」
デスクに近づいた係長に、
“お前も食うか?”なんて
塩キャンディを差し出している。
「へぇ…。そうなんですか。
うちは大丈夫ですよ。
二人が急ぎやアポが無いなら
応援に出しますよ。
いただきます。…つぅか…
この飴デカイ!!」
キャンディの包装袋を破いて
口に入れながら、係長は言う。
…頬がリスの様だ…
“ああ、美味いんだがな。
デカクていかんよなぁ”
部長代理も頬を膨らませ
ながら続ける。
「音村、お前は行かなくて
いいのか?」
「ええ、2人で大丈夫ですよ。
彼らなら、任せて大丈夫です。」
膨らんだ頬を気にしながら
喋りにくそうに係長は
返している。