sound village
最終確認**sideレン
「お先に失礼します。」
珍しく定時に業務終了し
事務所を退室する。
今日は、皆、外出先から直帰だし
何だか集中力が切れてしまって
このまま仕事するのは
無意味なことだと、切り上げた。
今日は、宅飲みだな♪
…まぁ、日課ですが…何か?
まだ外はうっすら夕日で明るくて
得した気分で、最寄り駅に向い
歩き出す。
うちの会社は、この辺りの
企業に比べて、始業時間が
少し遅いため、終業時間も然りで
既にオフィス街は人通りが少ない。
…ああ、でも、居酒屋開拓も
面白いかなぁ…
昨晩、電車の窓から見えた
新規開店の胡蝶蘭が並ぶ店を
思い出し、そちらへ足を向けかけた。
中々に立派な花とつぼみの付き方
だった。鉢数も相当あって圧巻だった。
以前間借りしていた社長室で、お祝いの
胡蝶蘭の開梱を手伝った時に、秘書さんに
聞いた話では、あの一鉢は5万円くらい…
下世話にも、あのお店の蘭の価格など
脳内で換算しかけたときだった。
「音村さん!」
薄暗いビル街で、女性の声がした。
私か?同僚?私、同僚に仲良しの
オンナ友達なんていませんけど…
たまたま他にも“音村さん”が
いるのだろうか?
キョロキョロ周囲を見渡せば
「あなたです!レンさんです!」
今度は男性の声がして、気づけば
目の前にリクルートスーツの男女が
立っていた。