sound village
爆弾発言**side斐川/
…勘違いしている上役の
相手ほどツマラナイ事はないな。
狸の置物を彷彿とさせる
総務部の部長は、自分の部下である
課長や係長相手に、武勇伝なのか
何なのかすら不明な昔話を
悠々と語っている。
サラリーマンの宿命なのか
どうなのか、ウンウン頷き
話を聞いてやる姿にも
内心呆れている。
勿論、直接指摘などしないが。
…うちの係長達なら、相手が
部長であろうが誰だろうが、
一撃でくだらないと
吊し上げていることであろう。
そんな事を考えながら
黙々と目の前に並べられた膳に
箸を進めていれば、斜め前に座る
人事部長が、こちらを見て
クスクス笑っているではないか。
しまった…話を聞いていない事が
バレてしまった様子だ。
「どうぞ。そのまま食べていて
構わないよ。」
前から思っていたが――――
この男…本当に人事部長なのか?
と、二度見してしまうほど
ワイルドで怪しげなフェロモンを
振りまきたくっている。
俺としては、この人のような
予測を超越してくる人間は苦手だ。
「…はい。」
軽い会釈で取り繕い、構って
くれるなという空気を醸し出す。