sound village


人事部長の視線がイタイ…

微妙な間がもたず、内心ビクビク
しながらも、隣に居たはずの
啓太の戻りを待つ。

まだここに来ない柏木の様子を
確認するため、スマートフォンを
手に、あの襖の向こうに出ていって
…3分ほどだというのに。
カップラーメンを作る時と
同じ時間と思えない程長く感じる。

「部長、お待たせいたしました。
仕事が長引いたらしく、今日は、
柏木君は来ないそうです。」

戻ってきた啓太が視界に入り
胸を撫で下ろした。

「そうか。残念だな。
君も食べなさい。動きっぱなしで
全然箸が進んでいないだろ。
まあ、君たちの年頃には、幾分
あっさりしたメニューかな。」

手酌で熱燗をチビチビやりながら
人事部長はクスクス笑う。

「いえ、俺、昼飯は唐揚定食だったんで
夜はこの位の方がいいです。」

「へえ…面白いな。君は。」

相変わらず返しがうまい。
部長も心なしか愉しそうではないか。

「そういえば、佐藤くん、
結婚するんだってね。」

“俺はてっきりアイツが相手だと
思っていたんんだけどな”等
独り言も交え、彼はその話題を
口にする。

…しかし、部長よ。
最近、その話題は、
俺たちの間では、
超タブーなのだ。






 






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