sound village


「神島くん、ファイルあった?」

書庫の引き戸を開けながら
啓太が呼びかけてくる。

「ああ。見つかった。」

啓太が手にしてるリーダーで
重要文書を綴じたファイルの
背表紙についた管理シールを
読み取っている。

「…っで、何で斐川も主任も
あんなにダメージ食らってる訳?」

大体想像できたでしょうが?
敢えてその言葉を飲み込んで
密室ヨロシク、俺の投げかけた台詞に
目の前の主任は、あからさまに
ビクッと手を震わせた。

「…神島くん…。俺、もう
受け止めきれない…(涙)」

「えっ?!何…??」

そんな弱音と共に、胡乱な目をして
チビッコはとうとう隠していた事実を
ゲロした。

…あの接待の席、俺が
米国人を相手にしていた間に
披露されていたという暴露話を。

「…マジか…」
「マジです。本人が言った。
ああ…何か言ったらスッキリした。」

俺に衝撃の事実を突きつけ
チビッコは吹っ切れた様に笑う。

…いや、今度は、俺が
笑えないんだけど。

「あの“歩くフェロモン”が、ですか…」
「それ、誰が言い出したんだろうね。
上手い事言うよね(笑)」

二人で書庫にもたれ立ち
天井と現実の間に存在する
異空間に意識を飛ばす。

…ダメだ。衝撃的過ぎた。
人の過去なんて聞かないに限る。


 








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