sound village


「ちょっと総務部に行ってくるね。」

午前中に、書庫から借りていた
過去の取締役会資料を抱え
神島くんに声をかける。

本日の管理部門の留守番要員は
啓太と人事部長しかいない事は
速やかに確認済みである。

…何とまあ、うってつけの
お礼参り日和だこと♪

「係長、それ重いでしょう。
俺が返しに行きますよ。」

なんて優しい良い子なの。
親御さんに感謝だよ。

しかし、レン様はこの会社で
入社時より男扱いされ続け
この程度は軽く持てるのさ。

「ありがとうね。でも、
このくらいなら平気だよ。」

ファイルを梱包した段ボール箱を
左肩に担ぎ、収まりきらなかった
薄めの背幅のキングファイルを
右手に持って事務所を出る。

「ファイル返却します。」
「あ、お疲れ様です。」

管理部門フロアの入口で
声をかければ、マグカップを
両手に持った啓太が、どこか
ノンビリした返事をした。













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