sound village


カウンターの上に、勝手に
段ボール箱を置き、総務部と
横並びになったデスクの島の奥
エンド席へ足を進める。

「あれ?レンちゃん?」

不思議そうな啓太の呟きを
スルーして進めば、
部長席に座るそのオトコは、
デスクに肘をつき、
頬杖をついた状態で
こちらを見上げニヤリと
人の悪い笑みを浮かべた。

天然のウェイブのかかった黒髪
人事部長のイメージに反する
長めの前髪を耳にかけ
大きく薄めの形の良い唇のコイツを
セクシーだと思ってる女子社員が
多いのは事実だけど。

悪びれず人を引っ掻き回す様は
本当に管理職かと唖然とする。

「よう。レン、久しぶり。」

デスク横に置かれた
パイプ椅子を指差し、
彼は素振りだけで座る様
指示をしてくる。

グングン近づき、
パイプ椅子の座面を
左脚でガンッと踏みつける。

「誰が、テメェの指示なんざ
聞くかっつーんだよ。」

怒りを堪えつつ告げれば。

「ほう?やれるものなら
やってごらん?レン。」

面白そうに挑発してくる
人事部長の頭上で、
無表情のまま右手に持っていた
キングファイルをフリーフォール
させた。

「だあああっ!!っ痛ぇ!!
本気でやるなよ!!」

そりゃ痛いだろう。
角が当たる様に細心の注意を
払ったのだから。







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