sound village


「部長、なんて?」

リクルーター2人を
手を振りつつ見送った後
わざと近めの距離から
レンちゃんの顔を覗き込む様に
問えば。

「イヤ、1号、普通に聞くな。
キミは社外の人間なんだぞ。」

溜息混じりでそう応えて
視線の角度から、身の危険を
感じたのだろう。俺の額に
拳を押しつけて、退けようとする。

いいねぇ…ひっかかってくれた♪

「おっと♪」

ちょっと仰け反るようにして
その拳を左手で包むように捉えれば
焦りを隠すように瞳を見開く。

…焦ってるんやろ?
その目、何回か見た事あるよ。

反撃を食らう前に、そのまま
緩んだ拳に指を滑り込ませ
手をつなぐと、自然とニンマリ
笑みがこぼれた。

「やっと、手つなげた♪」

ジワジワ体温を感じる柔らかい
ソレを、振り解かれないように
グッと強めに力を篭め留めて
不自然に感じないように路地へ
誘導する。

人一人が通れるくらいの道幅の
長い壁面つたいの路地は私有地らしい。
メンテナンス用の通路と推測する。
隣接するビルの裏口にも面せず
奥に続く通路の見通しも良くて超穴場。

「ちょっと!!こんなところで
何やってんのよ!?
関係者に見られたらどうするの!?」

おお♪焦ってる、焦ってる♪

「…なぁ。人目なかったら
構わへんっ思ってる…?」

二人の身長差を利用して
壁際に立つ元上司を上から覗き込めば
数年前の記憶が過ぎるけど

「…え?」

今度は、右手は俺と繋がってるから
利き手が自由な分、俺が有利。

可哀相なくらい狼狽を隠そうとしてる
その瞳に、このまま一気に詰めようと
高まる感情をセーブする。

 
 

 

 



  

 






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