sound village
「ああ。いた。」
ティールームに入り
待ち人を探していた部長は
小さく呟くと
迷わず足を進めて行く。
室内は、セピア系ワントーンの
センスの良いステンドグラスを
通過した光で満たされていた。
白い光線の中、部長は進む。
重い足取りで部長の後を
ついていけば、手を上げて
部長に合図を送る人に
気がついた。
あれ?って…リヒト?
…まさか、部長のいう相手って…
リヒトのことだったの?
部長は、そんなにも
彼の人柄を買っていたというの?
優雅に笑みを浮かべる彼に
私は戸惑う。
『やぁ、レン。ひさしぶり。』
相変わらずの人懐っこさに
『…そうね。』
何とか、冷静さを装って
そう言葉を紡ぎ出したけど。
『レン、“見合いの相手”
俺だったらどうする?』
リヒトの質問の真意と、
その答えを必死に探り求めれば…
「音村。心配するな。二択だ。
どっちを選んでも、お前の
シスコン兄弟に太刀打ちできる。
ほら、とりあえず座れ。」
部長がそういって、
自分の隣を指差したのだった。