sound village
女神争奪**side柏木
待ちに待った日――――
この日のために、
俺は頑張ってきたんやなって
シミジミ思う。
今日、長年の想い人に
漸く思いを言葉にして告げられる。
長かった…本当に、俺にしては、
よく待ったと思う。
部長とレンちゃんが、
待ち合わせ場所のティーサロンに
入って行く所を眺めつつ
ホテルのロビーで、
緊急電話の対応をしながら
シミジミ想いを噛み締めた。
日本に帰って直ぐに、
お世話になった営業部長に、
電話で一報を入れていた。
…俺の転籍は、受取り様に
よっては、とんでもない不義理で
あったとも思うから。そして、
頭を下げついでに、もうひとつ
お願いしたい事もあった。
『…ここか…』
閑静な住宅街、庭付き一軒家。
昔気質なところもあるのか、
部長が面会場所に指定したのは、
彼の自宅だった。
門扉のインターホンを鳴らし、
応答を待つ間に庭に目を遣れば
二台車が停められるスペースと、
新しいバスケのリングが片隅に
あった。高さからすると、
本当に小さい子供用かな。
『柏木、入れ。すまないな。
ちょっと遠かっただろう。』
玄関から普段着姿の部長が
顔を覗かせ、ヒョイヒョイ
手招きをする。
『お邪魔します、部長。
休みの日にすみません。』
お茶を出してくれた奥様にも
頭をさげた。