sound village
「係長、この資料・・・
先週、何とか課長が神島に渡した
資料と関係あるんですか?」
本当はーーー
さっきの弁護士の電話と
関係あるかを聞きたかったのだが
敢えて外した問いかけをする。
「関係あるかどうかを
これから調べるんだよ。」
そういいながら、立ち上がった
彼女が、慌てたように
書棚に手を伸ばした。
目測を誤ったか、
指先が宙を掻いたのを見て
立ちくらみを起こした事に気づき
咄嗟にその体を支える。
「係長・・・大丈夫ですか?
最近、昼飯食ってないですよね?」
「そんな事ないよ。」
「今日も、食ってなかった。」
朝から、打ち合わせやら
俺達の管理なんかに
走りまくっていたこの人は、
自分の健康状態に、余りにも
無頓着すぎる。
「ダメだ…貧血だ…」
腕の中で小さく呻きながら
彼女は、脱力する。
「倒れていいですよ。
俺が、支えてますから。」
…とは、いったものの
意識を失った人間を
一人で支えきれる訳もなく
そのままその場にもつれこむ様に
彼女を抱え込んで座り込んだ。