sound village
 

部長の“二択”という台詞に
被さる様に登場した俺に
レンちゃんが瞳を見開いている。

…部長、勝手に二択にするな。

リヒトは、あんたらが、この後、
ゴルフに行くのに、待ち合わせた
だけやろ?!

流石の俺も、事前に聞かされて
無かったら、どうしたらいいか
分からんかったと思う。
まさかの待ち合わせ場所被せに
ビックリするわ。

…いくら、俺の気持ちは
ずっとひたすら世間に公開してる
とはいえ…

…人の恋路より、趣味のゴルフを
優先したい気持ちも重々承知してる
けれども!!

…見合いとゴルフの待ち合わせ場所
一緒に済ますって…前代未聞やろ…

『じゃあ、俺たちも行きましょう。
親父達は先にコース回ってますので。』

『わざわざ迎えにきてもらって
申し訳なかったね。ゴルフ日よりだな。
急いで行こうじゃないか。』

俺が現れた事で、ニヤニヤしながら
リヒトと部長は席を立つ。

『こういう時って…
何ていうんだっけ。』

呟いたリヒトに

『ああ。慣用句だな。とりあえず、
見合い相手の紹介はしたからな
“後は、若いお二人で。”だ。
じゃあな、音村、また明日。』

部長がそういって、レンちゃんに
軽く手を上げて合図した。

『え…?!』

「部長、有難うございました。」

状況が読めず、狼狽するレンちゃんを
尻目に、ここへ彼女を連れてきてくれた
感謝の意をこめて、一礼する。

「ああ、柏木、またな。
後は自分で何とかしろ。」

彼は、そういって、
俺の二の腕を拳で軽く叩いて
リヒトと共に、早々に、
去っていってしまった。

さて…と、

後は、俺次第やな。



 



 

 


 
















< 591 / 625 >

この作品をシェア

pagetop