sound village
「こんだけオッサン揃うって
ちょっと圧巻やな。」
俺の隣でストレッチを始めた
柏木が愉しそうに笑う。
「そうだな。膝は…普通に
ゲームできそうなのか?」
「モチロン。その為に手術したし♪
趣味レベルなら問題ないよ。」
アップを始める姿には、
不自然に膝を庇う様な様子はない。
俺が今週、浮ついていたのは
バスケ以外にも、原因があった。
「で、アッチの件の首尾は?」
「ん?ああ…アッチは苦戦中。
既に二回断られた(笑)」
“アッチの件”すなわち、
俺が、先週目撃してしまった
手繋ぎデート。
その顛末を聞いたのは
週明け早々の事だった。
『ああ…あれ、やっぱり
神島やったんやな。』
言葉を選びながら
真相を尋ねた俺に
柏木は、そう言って苦笑した。
『まあ…そういう事や。』
心底嬉しそうな表情から
幸せそうで何よりと思う。
何せ、長かったからなぁ…
でも、あれだけ頑なだった
音村係長を軟化させるなんて
どう言ったんだろうと、ちょっと、
気になって仄めかせば。
『ああ、軽く脅した。』
『はっ?!』
その時のことを思い出してか
柏木は悪い顔をして笑う。
コイツは、本当に…
食えないヤツだ。