sound village
 

そういえば、アメリカに出向前、
斐川くんと啓太は、真月さんから
英会話の特訓を受けていた。

超スパルタで、啓太がメソメソ
していた事を思い出す。

「音村係長。」

眼下から私を見上げ呼びかける
斐川くんに視線を送る。

「はーい。どーした?」

彼からアプローチを受けた事も
今では思い出だ。神島くん情報では、
かわいい彼女ができて
仲良くやってるらしい。

「やっと、思い切りましたね。
ご婚約、おめでとうございます。」

決して大きくないけど
クリアで通りのよい声。
彼は、とても穏やかな
表情をしている。

「ありがとう。」

彼は、最近、グッと雰囲気が
素敵になった。きっとカノジョが
とっても良い子なんだろう。
シミジミと感慨深く思っていれば

「音村係長、そこに居るの
俺のカノジョですよ。」

そう、斐川くんが私の背後を
指差す。

「マジか?!」

何故か真月さんの方が
いち早く反応して、振り返る。

「…まぁっ♪
可愛いじゃないの。」

お初にお目にかかるというのに
こんなイカレタ風貌の上司で
申し訳ない!!
心の中で、部下とそのカノジョに
詫びもって振り返れば

「こんなものしか持ち合わせて
おりませんが、…このたびは
おめでとうございます。」

そういって、小柄な女の子が
笑顔で、イチゴの包みの飴を
掌に載せてくれた。


 




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