M√5

「ごめんなさい、芽奈。私はあなたの才能だけ見て、肝心なあなた自身を見ていなかった。
 ……コーチ失格だわ」


呟くように言って、顔を伏せる女性。


「……先生」


涙が何本にもなって、大槻さんの頬に流れる。



「これからは、芽奈の夢に協力させて。
 それから……彼らにもお礼を」


そう言って、将人に向き直る。


将人が少し驚いたようにそちらを見る。


「お礼なんて……言われることは、何も」


両手を突き出して、首を否定するように横に振る。



「いいえ……あなたのおかげで気づけた事だから。
 本当にありがとう」


深々と頭を下げる女性。


何が何だか分からない。

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