M√5

「……よし、出来た」


パチンと糸を切って、誰もいないのをいいことに呟く。


誰からも見られていないテレビが虚しく騒ぐ。



手芸店まで自転車を飛ばして買ってきたのは、明るい紫の太めの糸。


今はもう立派な紐になっている。



ふと、これを付けた彼女を想像したら、彼女の言葉が先に出てきて、慌てて目を閉じた。


そしてそのまま夢の世界へと引きずり込まれた。



天の邪鬼で気の高い女の子が仲間に加わりました。




「……珠月、鍵開けたままじゃ危な……なんだ、寝てるのか、テレビも付けたままで。
 全く、ブランケットくらい掛けろよ……。

 ……ん、何だこれ。ミサンガか? 懐かしいな……」

< 140 / 154 >

この作品をシェア

pagetop