M√5

泣き喚きそうになった私を制して、そっと立たせたのは、優しい手。


今度は熱を持ったりしなかった。



「……外に出よう」


まるで原因が分かっているかのように、そっと私を誘導する。



……前にもこの人に誘導されたことがある。


確かあの時私は、ボロボロと泣いていて……。



胸の痛みの中で、ぼんやりとそんなことを思っていた。




半分肩を抱かれるような体勢で歩かせてくれる。


体重をほとんどかけて私は歩いていた。



座らせられたのは裏庭のベンチ。


汚れを払って、タオルを敷いてからそこに促してくれた。

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