M√5



「…………え……?」



口元が引きつって、喉が異常に乾く。


こんなふうに、体はすぐ反応するのに、思考回路がついていかない。


そのくせ冷静に、人間って不思議だな、なんてどうでもいいことを思ったりもしている。



「だから、もう別れようって」



大好きな彼の声と、その声が紡ぎ出す残虐な意味と、そして強い風が出す葉擦れの音だけを捉える私の耳。


「おーい珠月? 聞いてるか?」



……これはYesなのかNoなのか。


聞いてはいるけど聴いてはいない、ってのが答えかな。

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