船員日誌
タイトル未編集
海が好き。
 貴方から貰った船員日誌、五月十八日、今日から私が続きを書きます。
何時、交換できるかも分からない交換日記。
貴方は1週間しか書いていないのね。
一日一日、天候、風向、発港と着港、丁寧に書かれた文字に貴方の面影を思い出し胸がキュンと痛かった。
貴方は今頃何処を航海しているのかな。
貴方の手のぬくもりが今も私の手に残っています。だって、ほんの数時間前まで一緒にいたんだものね。
この次、何時逢えるのかなあ。今日はこれでおやすみなさい。

 昨夜はたくさん夢をみました。
しばらくは、貴方と過ごした短い休暇を思い出す辛い日々が続きます。
寮生活は楽しいです。あと少しで夏休みです。
高校二年生、進路も考えなければなりません。
私も海に係わる仕事がしたいなあ。
今日も用もないのに港に行って来ました。
この海が貴方の船に繋がっている?って当たり前か。
港から寮には戻れずつい貴方の大好きな喫茶店に行きました。
雨に降られて逃げ込んだ喫茶店。
南国でもさすがに寒くって貴方はホットコーヒー私はホットミルクを頼んだよね。
ちょっとでもかわいい振りしたくて・・・
私・・・ホントは牛乳って嫌いなの。
でも、その日のミルクは何故かとっても美味しくて「牛乳とミルクは、きっと違う飲み物だよ。」ってかわいい振りした事バレバレね。
今日のホットミルクはいつもの牛乳の味、やっぱり嫌い、美味しくなかったよ。

 夏期講習に明け暮れた夏休みも今日で終わりました。
貴方は今頃何処を航海しているのかな。
小樽の消印の小包受け取りました。
木彫りのペンダントありがとう。きっとふっかふかのセーターに似合うね。
南の島にも秋の風が吹いてきました。
今日も港へ行って来ました。
やっぱり、この海は貴方の船と繋がっているんだね。貴方が帰って来るって教えてくれました。

 今日はクリスマスイブ。
久しぶりに逢った貴方はすっかり大人になってたね。
運転免許を取ったなんてきいてなかった。
レンタカーなんて借りちゃって、ホントに大人の男の人になってしまってた。私、おいてけぼりって感じ。
島一周はあっと言う間に走り切ってしまって、「もっと島が大きければ・・・」もっと助手席に座って貴方の横顔見つめていられるのにね。
岸壁で海を見ながら色々話したけど寮の門限が来てしまってごめね。
今度の帰省はすっごく、すっごく期待してたのに、な~んにも「どきっ!」ってする事、一度もなかった。
やっぱり、貴方は大人で私は門限のある子供・・・。

正月は一度も逢う事もなく、優しい貴方は久しぶりの実家でしっかりお母さん孝行をしてた様ですね。私、貴方のお母さんに自慢されちゃいました。
正月が終わるとサッサと船に乗り込んで行ってしまいました。
この船員日誌、今度は貴方の書く番なのに・・・。
結局、私がそのまま書く破目になってしまったね。
貴方は今頃は、島の終わりの灯台の光を見ているのでしょうか?
貴方の手のぬくもりが今も私の手に残っています。でも、前ほど暖かく感じとる事が出来ないでいます。
進路の事と好きなのに離れている辛さと、私のセンサーはとても鈍くなっています。
この次、何時逢えるのかなあ。今日はこれでおやすみなさい。
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