賭けで動く恋
最初の賭け

シャラシャラとガラス製のウィンドウチャイムを鳴らしながら白木で出来た格子戸の扉を横に引くと、暖房の温かい風が身体を満たして11月中旬の寒さが消えてホっと息を吐いた。

「何処に座ります?」

古民家を改築したという和スイーツのカフェは中央の通路を挟んで左右それぞれ小上がりの畳敷きになっていた。

2人がけの席は3つ程空いていたので私は後ろで寒さに鼻を赤くさせてる、緩い癖のあるミルクティー色の髪に色白の肌、パッチリした二重大きな目をした可愛い系の仕事仲間の百合さんにどの席がいいか尋ねた。

「あの右奥の席でいいんじゃない?扉に近いと開いたとき寒いし」

百合さんの答えに、確かに、と納得して右奥の席に向かった。

焦げ茶色のコートと手袋を脱いで壁側に座った百合さんの反対側、通路に背中を向けるように着物の上に着た白地に所々鮮やかな赤を使った墨絵で描いたような花の絵柄の長羽織を広げて座った。

店員が持ってきた温かいお茶の入ったコップを握りしめて頬に当てる百合さんに苦笑してメニュー表を中央に置いた。
< 1 / 75 >

この作品をシェア

pagetop