賭けで動く恋
「しつこいですよ薫さん。何度も断るって言ってるじゃないですか」
190㎝はありそうなスラッとした長身を白い無地の着物と光の加減で市松模様が浮かび上がる黒地の羽織に包んだ、胸元
まである黒髪を左耳の下で1つに結んだ男性から発せられた低くて艶のある声に背筋が粟立った。
「そう言わずに頼むよ淳(アツシ)」
「だから嫌ですってば。
私みたいなひよっ子が個展なんか開いたら面白くない人だっているでしょう」
「大丈夫だって。親父がお前の事可愛がってるって皆知ってんだし」
黒いスーツとコートを着た男性と淳と呼ばれた男性は軽く言い合いながら、通路を挟んで私達の反対側の席に、私に背中を向けるようにスーツの男性が、壁側に着物の男性が腰を下ろした。