妖花
「おい段田よ。まさかおめえは、こんながきに仕事を寄越そうとしたのか?」
「悪いかい?」
段田は逆に問い返した。
「子供であろうとなかろうと、使えるなら例え猫の手でも使うべきだろう」
「今までそう言って使った浪人も、結局は樗礫だったろうがよ。大の男だって、出来やしなかった。それをこの、がきの侍にやらせるのかい」
さっきから、この男どもは子供だ餓鬼だとうるさい。
菊之助はむっとする。
「誰が子供だ。もう十六だぞ」
菊之助が言い返したが、
「このがき、十六だってよ」
「まだ子供じゃないか」
段田と春芝は顔を見合わせるや、こぞって余計に「子供だ」と連呼し始めた。
「俺あ、子供じゃないやいっ」
抑えられていた地雷が爆裂を起こした。
さすがの菊之助も腹を立てて地団駄を踏む。
(姉ちゃんといいこいつらといいっ)
なぜ彼らは、年齢だとか性質だけで子ども扱いしてくるのだ。
「うるせえがきだな」
「子供とは得てしてそういうものさ」
段田と春芝に散々侮られ激怒した菊之助だったが、ここでいったん黙り込んだ。
憤怒の泡が浮上してくるが、下唇をはんで耐える。
「ふん。よく聞けよ、そこの口入れの二人」
菊之助は鼻を鳴らしてみせた。
「大人に向って『聞け』はないだろう」
段田がやや口を尖らせる。
「お前らが今までの浪人に、どんな仕事を紹介したのかは知らない。だけど、侍に出来る仕事があるなら、俺あ、やってのけるつもりだぞ」