妖花



「だが、君は見事に妖を追い詰めてみせた。おかげで私は目的を一つ果たせた」

「う、うん」

「仕事をお探しなら、またおいで」

 それはつまり、ここに来れば自分にもこなせる仕事を確実に寄越してもらえる、ということだ。

段田の態度と物言いはいつも癇に障るが、それだけで仕事を放り出しては人という生き物は務まらぬ。

「おう」

 妖花屋ほど、自分にとって都合のよい口入れ処は他にない。

菊之助は意欲満々で姿勢を正した。

「まあ……がきにしては大したもんだ。駒として使うだけなら、こいつあ適役なのによ」

 春芝が牙にも勝る鋭利な目つきを、かすかに和らげた。

 やった、春芝にも褒められたぞ。

菊之助は内心で大喜びだ。あの眠気はいづこへ消えたのやら、菊之助はいたいけに眉を弓形にそらせた。

 そんな子供侍をよそに、春芝はいつになく厳めしい視線で段田を射貫いていた。

それに気付いているはずであろうに、段田は昼間の猫の如くにのんびりとして、カステラを口の中に放り込んだ。



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