探偵vs
「その男が、私に何か言ってましたか?」
少し声を震わしながら木嶋は訊いた。
「いえ、特に何も言ってませんでした」
それを聞いてホッとしたのか、木嶋の震えは治まった。
(この探偵を陥れるためにはどうしたらいいか?)
気持ちが治まったかと思えば、木嶋の頭にこの言葉が浮かんできた。
(否、それは失礼すぎる!紳士を保つのにそのようなことを考えるのはいかん!)
木嶋は自分の頭の中に浮かんだ言葉を否定した。
「それで…どうすればいいですか?一応、契約となっておりますので…」
霧は、木嶋の妄想を打ち破った。
「あぁ、すまない。では、ここからは独自に行動をする」
「つまり、どういうことで…?」
「これ、本日までの料金だ。短い期間だったが、五十万円ほどある」
木嶋は調査を中止させ、今日までの調査料を出した。
「こんなに…。いいのですか?」
控え目に霧は言った。
「構わない。もう帰っていい」
木嶋は終了を宣告した。
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