封印戦慄映像
「ほら、これでもう大丈夫だ。こういうのは勢いが大事なんだよ。早く逃げるんだ! ここにいたんじゃ最後には餓死してしまう……行くよ久実ちゃん!」


茂は、直子の目印で小さな模様を探し出し、躊躇せずに押した。その後で私の腕を無理やりと引っ張り、先に押しやった。


――そんなに力強く押さなくても! 転んじゃったじゃない!


慌てて振り返ると、茂るもこちら側へ入り込み、閉まる直前に陸也と目が合った。


切なそうで悲しそうで、その瞳が何を言いたげなのかが分からなかった。


スライド式にドアは閉まり、陸也の姿も視界から消え、目の前が真っ暗闇に染まった。まるですべてが煙のように消えてしまったみたいに。


――壁が黒?


いや、消えたんじゃない。一切明かりがなく、黒の部屋で何も見えなくなったのだ。
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