封印戦慄映像
 ――それって死ぬっていうこと?


「なんでよ! なんで死ななきゃならないのよ!」


「直子とやら。お前は冬馬が好きなんだろう? だったらこの罪人の代わりに死ねるのではないか? 愛とは尊いものだ……そうだろう?」


良寛の声に直子は口を噤んだ。唇を噛み締めている。先程の大粒の涙は止まったようだった。


――冬馬……。


愛しい人の顔をもう一度眺めた。


その薄い唇に何度、重ね合わせたっけ……その大きな瞳を見つめ返すのが好きだったのよ私。……でも、その体は他の人の体温も味わっていただなんて――。


「冬馬……邪魔なのは私でしょう。私のボタンを押して」
< 56 / 146 >

この作品をシェア

pagetop