封印戦慄映像
 私たちは悲しげな目で見詰め合った。もしかしたら、これが思いを交えた、初めての瞳なのかもしれない。そう思うと切なくなった。


「……冬馬」


「許せ、久実!」


冬馬が赤いボタンを押すと、牛の前足が地面を掻く体制になり、スピードが速くなった。直子の牛は反面停止したようだった。


「きゃあああ!!!! い、痛い!」


「冬馬とやら、ボタンは長押ししないと股が裂けぬぞ? 体を裂くまで押すのだ!」


「え、そんな……」


歪む顔、脂汗が滲み出す。


こんな表情、冬馬には見られたくなかったな……


「きゃあああああ!!!!」
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