封印戦慄映像
 この地獄のような交響曲の終わりは死のみ?


――私の……う、牛が止まっている?


「なんでよ! 冬馬! 私の足が! 誰よりも綺麗な足が! ぎゃあああああああ!!!!」


「ごめん、直子……お前は遊びだったんだ。つい誘惑に負けてしまった俺は、本当に悪いやつだよ。影にある久実の深い愛に、甘えてしまっていただけだったんだ。許し――て」


冬馬の声に思わず目をギュッと瞑った。


鼓膜に劈く悲鳴。大量の血が流れるシンフォニー、臓物の管楽器が床で奏でていた。


やがて直子の息が止まり、牛が元の位置へ戻った。ギィーと車輪を戻す音に、早鐘を打っていた心臓が、奇しくも少しだけ落ち着きを取り戻していた。


体は正直だ。そう思うと涙が零れた。死を望んでいたはずなのに、体がほっとしている。


――ごめん直子。本当にごめんなさい……
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