きっと絶望だ

 彼のいない六畳半は酷く息苦しい。

 置き去りにした包丁の横で、自身の浅はかさを笑った。

 独りきりの部屋は声がよく通る。

 狂うことも出来ないことが情けない。

 「あはははは!っは…あぁ…バカらしい」

 冷静な頭では笑うことすらめんどくさい。

 立ち上がり冷蔵庫をあけ、ペットボトルの水を飲んだ。

 口から溢れた少量の水を乱暴に腕で拭い、扉横の棚に投げていた財布を片手に家を出た。

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