きっと絶望だ

 ガタガタ震えてカッターナイフを投げ出し、腕を右手で掴んだ。

 生ぬるい血が右掌に広がるのも構わず、傷が刺激され痛みが走ることに震えた。

 「はあぁぁぁ…」

 深く深呼吸し、トイレットペーパーで軽く血を拭き取り袖を下ろした。

 カッターナイフは汚物容器に突っ込み、トイレットペーパーは水で流してトイレを出た。

 右手は水でよく洗い落とし、服についた血にも軽く水をかけておく。

 ひりつく左腕の裾に血がどんどん広がり冷静な頭でヤバいなと呑気に考えた。

 早足でトイレを出、レジ横の扉に手をかければやる気のないバイトが「あっしたー」と声をかけてきた。

 速やかに店を出て、マンションに帰ろうしてやめた。

 あそこに彼の姿がないなら、帰る意味がない。
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