七赤村
張り詰めた糸がプツリと切れ、人々がそわそわと動き出し、わずかな安堵が広がる。
しかし、まだ不快感はぬぐいきれず、まだ妙な緊張感が居座っており、誰ひとり言葉を発さずに部屋を淡々と出て行く。
僕は正座をしたまま、出て行く人たちの背中を呆然と眺めていた。
本当は今にもこの部屋を出ていきたい。
でも、太ももとふくらはぎがくっついてしまったように離れてくれない。
おまけに腰も抜けてしまい、きっと顔面蒼白なんだろうと思う。
「お兄ちゃん、行こうよ」
すぐ隣にいた沙由が立ち上がり、僕に声をかけた。
ふっと我に返ってあたりを見回すと、村人たちは全員いなくなっており、部屋には、儀式に使った用具を片付けている村長さんと、僕と沙由の2人しかいなかった。
「・・・うん。いこっか」
僕はそう言って立ち上がった。
かくんと膝が折れてしまいそう。
恐怖というものは、体に染み付くものである。
いくら忘れようとしても体だけは覚えており、そのトラウマになったものに対しての嫌悪感と畏怖、そして拒否反応を繰り返すことになるのだ。
乗り越えようとするのも、受け入れるのもできないのは百も承知なので、僕は必死に耐えることにしている。
耐えていれば、嵐はいつか収まるだろう。
そんな儚い希望を胸に抱いて。