七赤村
「ああー、こりゃひどいな」
出ていこうとした僕の後ろから、老人の声が聞こえた。
思わず振り返ると、その声の主らしき人物が木箱の蓋を持って、裏側をまじまじと見つめていた。
生贄を入れていた箱の蓋だ。
「どうしたのです?」
もう一人の老人が近づき、蓋の裏を覗き込んだ瞬間、うっと呻いて顔を顰めた。
「・・・これは・・・」
「爪の跡・・・ですな。
よっぽど出たかったのだろう。手首を縛っていたというのに、それをほどいて。
相当な引っかき傷だ。爪が剥がれてもなお、すがりついたのだろうな」