Memory.
南風でゆらゆらと揺れる長いストレートロングの髪。
さわさわと葉擦れの音。
静寂に包まれた通学路にはぽつぽつと高校生が見え始めていた。
あたし、園川茅乃は高校2年生。
親……とは呼べない、保護者の都合で転勤になったのだ。いわゆる、"転校生"というポジションに立たされたあたし。
まだ学校の道も把握してないというのに、「いってらっしゃい」と放たれて現在に至る。
どれだけ適当なんだ。うちの"保護者"は。
あたしは、孤児だった。孤児院で育ち、今の親に引き取られた。
今の親は元々娘持ちで、あたしの妹に当たる存在。
妹は、可愛くて、明るくて、友達付き合いもよくて……、あたしなんかよりも、よっぽどいい女だ。
もちろん、あたしは妹みたいにはなれない。
"あの事"は、あたしの廻りを一生離れずにずっと付きまとっていくんだ。
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ぼやっと変なことを考えてるうちにあたしの高校の制服もちらほら見えるようになってきた。
道を把握していないあたしは、その人たちに精一杯着いていくだけ。
この先の不安なんて、考える暇もなかった。