月と太陽
「わたしの願いは、タケルと亜利沙が大切な人に出会って、愛し愛されること。だから、タケルにそのネックレスを渡したのよ。大切だと思う人が出来たら、渡しなさいって」

優しい声で、お母さんは言った。

エプロンを外し「そろそろお風呂からあがって来るかしらね、タケル」と微笑むお母さんは、キッチンを抜け出し、寝室がある奥へとスリッパを鳴らして消えて行った。

たくさんの想いが詰まった、三日月のネックレス。

タケルは、どんな想いでこれをわたしに渡してくれたんだろう。

そう思うと、ただ自分の心を落ち着かせるためだけに身に付けているのは、あまりにも身勝手な気がした。

タケルの気持ちに寄り添いたい。

まだまだ自分のことで精一杯だけれど、そう思った。
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