月と太陽
すると、タオルを首にかけ、髪を濡らしたタケルが戻って来た。

タケルは、ポツンと1人でキッチンに立つわたしを見ると、不思議そうな表情を浮かべた。

「そんなとこで何やってるんだ?」

わたしは「何もしてないよ」と微笑んで誤魔化すと、キッチンから離れ、タケルの近くまで歩み寄った。

「あ、そうだ。昨日言い忘れちゃったんだけど…」

わたしは三日月を親指と人差し指で摘まんで見せた。

「ありがとね」

タケルはわたしの言葉に首を横に振ると、優しく微笑んで三日月を見つめた。

「亜利沙や母さんには、何か言われたか?」

何かを探るようにタケルが言う。

まるで、余計なことを言っていないか、と確認しているように。
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