月と太陽
「似合うねって、言われたよ」

もつれそうになる言葉を出来るだけ整えて、わたしは答えた。

嘘はついてない。

ただ、言われた内の一部しか言わなかっただけだ。

「そうか」

タケルは安心したかのように、肩の力を抜いたように見えた。

「しずくも風呂に入れよ。今日は疲れただろ。ゆっくりお湯に浸かって来るといいよ」

「そうね。そうしよっかな。部屋にパジャマを取りに行かなきゃ」

わたしはパジャマを取りに行くためにタケルと共に階段を上った。

階段を一つ一つ上りながら、壁に飾ってある写真を見た。

どこかの公園の砂場であろう場所で、砂をかき集めている幼いタケル。

こっちを向いているが、その表情に笑顔はない。

これは何歳くらいだろう。

小学生には見えないから、まだ日下家に引き取られて間も無い時だろうか。

そんなことを考えながら、階段を上っていた。
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