月と太陽
幸ちゃんは黙ってわたしを見つめた。

その眼差しで後ろに押し倒されてしまうのではないかと思うほど、強く、そして悲しげだ。

すると、後ろから誰かがわたしの肩に触れた。

振り向くと、そこには何とも言えない複雑な表情を浮かべるタケルが立っていた。

「もう行こう。遅刻する」

そう言うと、わたしに優しく微笑む。

しかし優しいタケルの表情は、幸ちゃんに向けられると一瞬にして消えて無くなった。

幸ちゃんもまた、無表情でタケルを見ている。

わたしはタケルに肩を抱かれて、幸ちゃんに背を向けると、校舎の中へと入って行った。
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