月と太陽
屋上から見える景色は、すぐそばに川が流れているのが見えるが、住宅街であまりいい景色とは言えない。

けれど、この場所に来ることに慣れて来たわたしにとっては、教室より遥かに落ち着く場所になっていた。

わたしは青いベンチにお弁当を置くと、空を見上げた。

今にも泣き出しそうな空と、生温い風がわたしたちを見下ろしていた。

「しずく」

青いベンチに座り、タケルがわたしの名前を呼ぶ。

その声は優しく、高校生とは思えぬほど落ち着いていた。

「気になってるのか?あいつのこと」

タケルが言う「あいつ」とは、幸ちゃんのことだ。

わたしは青いベンチに座ると、お弁当をベンチから膝の上に移動させ、ゆっくりと頷いた。
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