月と太陽
「あいつは、しずくのことが好きみたいだな」

「そうなのかな…。小さい時は、毎日のように一緒にいたから、今のわたしが幸ちゃんを避けてるのが気に入らなくて、怒ってるのかと思ったけど」

わたしの言葉にタケルは、微かに笑って「俺には、そうは見えなかった」と言った。

「どう見ても、しずくに好意がある様子だったな。しずくは、どうしたい?」

タケルの「どうしたい」の問いに、わたしは少し焦った。

あいつを選ぶか?と訊かれたように感じて、胸が苦しくなったからだ。

「わ、わたしは、タケルと一緒にいたい。幸ちゃんは、昔は仲が良くて好きだったけど、今の幸ちゃんは良くわからないし…、わたしは、幸ちゃんを選ばない」

焦った様子のわたしを見て、タケルは優しく微笑んでわたしの手をギュッと握り締めた。

そして「わかったよ」と、風にさらわれてしまいそうな程、そっと温かく呟いた。
< 160 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop