月と太陽
梨子に手を引かれ、亜利沙を先頭に何軒かお洒落なお店を廻った。

服をわたしの身体にあててみては「これはちょっと地味かしら」とか、「こっちの色の方が似合うわね」とか言って、たまに涼の意見も聞いていた。

涼はどの服をあてられても「可愛いよ」と言った。

涼から「可愛い」なんて言われると、少し照れくさい。

1時間かけて選んだ物は、花柄のワンピースにちょっとヒールが高めのワインレッドのパンプス、それからクラッチバッグだ。

こんな服、今まで着たことがないし、こんな高いヒールのパンプスだって履いたことがない。

全てを試着して、店内の鏡の前に立って見るが、そこに映っている自分が自分ではないようで不思議な気持ちになった。

わたしの背後に映る亜利沙、梨子、涼は頷きながら微笑んでいた。
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