月と太陽
帰りの車の中で、わたしは亜利沙と梨子に口止めをされた。

デート当日にタケルを驚かせたいから、服を買ったことは言わないでおこうと言うのだ。

悪いことをするわけではないのに、タケルに内緒事をするということで、罪悪感がわたしを襲う。

どうか、タケルに何をして来たのか、訊かれませんように。

梨子と涼を家まで送り、亜利沙と2人きりの車内でわたしは祈った。

しかし、その祈りは届くわけもなく、結局わたしはタケルの質問を誤魔化して過ごすことになったのだ。


天気に恵まれた、青空が綺麗な土曜日。

わたしは亜利沙の部屋にいた。

いつも簡単にしか化粧をしないわたしに、亜利沙はここぞとばかりにバッチリ化粧をキメた。

「ちょっと濃過ぎない?」

不安なわたしの声に亜利沙は「とっても綺麗よ」と耳元で囁いた。

熱々のコテで癖のないストレートなわたしの髪に緩いウェーブがかかる。

亜利沙に買ってもらったワンピースに包まれ、クラッチバッグの持ち方を教えてもらい、全身鏡の前に立った。

まさにデート仕様な自分の姿に照れてしまう。

亜利沙はわたしの姿に腕を組んで満足そうに微笑むと、「そろそろ時間よ」と言った。
< 168 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop