月と太陽
幸ちゃんは「大切にしてもらえよ」と言い残すと、わたしたちの前から立ち去った。

その背中は寂しげで、姿が見えなくなるまで目を離さずには居られなかった。


わたしたちは、今日学校に行くのをやめた。

もうすでに1時間目が始まっている時間だ。

これから行ったところで遅刻の理由を訊かれ、「その顔の傷はなんだ!」と問い詰められるのが目に見えている。

空を見上げると、ゆっくりと雲が流れてゆく。

少し冷たい風が頬をかすめ、髪の間を通り抜けていくのがわかった。

匡人と涼は芝生の上に寝転がり、消耗した体力を回復させようと昼寝を始めた。

タケルは川のすぐ側まで行き、静かに流れる川を眺めている。

わたしは梨子と共に、匡人のすぐ側の芝生に並んで座った。
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