月と太陽
「何してるの?」

わたしが声を掛けると、亜利沙は笑顔でわたしを見上げ「しずくは、どこがいいと思う?」と訊いた。

どの雑誌にもお洒落なレストランの写真が載っている。

お洒落なレストランに無縁で生きてきたわたしには、どれがどう違うのかさっぱりわからなかった。

「レストラン選んでるの?」

わたしはソファーに腰を掛けた。

亜利沙は「そうよ」と言うと、一冊の雑誌を手に、わたしの隣に座った。

「今月はタケルの誕生日があるのよ」

そんなことは初耳なわたしは、思わず「えっ!?」と声を漏らす。

亜利沙は「やっぱり知らなかったのね」と言うと、少し呆れ気味に笑った。

わたしは自分の部屋に戻ると、自分の財布と相談をした。

タケルの誕生日が今月だと知ってたら、お小遣い貯めておいたのに…

そんなことを考えたが、今更もう遅い。

プレゼントを買うのが無理なら、タケルの望むことを叶えればいいのではないか。

そう思い、わたしはタケルが居るはずの壁をノックした。
< 199 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop