月と太陽
すると、キッチンの陰から誰かが飛び出して来た。

「しずくー!お誕生日おめでとう!」

そう言って出て来たのは梨子だった。

「梨子ー!」

わたしは思わず梨子に抱きついた。

冬休みに入ってから、時々メールはしていたものの、会うのは初めてだったからだ。

「黙っていてごめんよ。しずくを驚かせたかったんだ」

タケルはそう言って、申し訳なさそうに微笑む。

わたしは首を横に振り「嬉しいわ」と言うと、笑って見せた。

「おいおい、俺たちのことを忘れないでくれ」

聞き覚えのある声に、梨子の肩越しにそちらを向くと、そこには匡人の姿があった。

その横には、涼の姿もあった。
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