月と太陽
タケルは、5時間目も6時間目も窓の外を眺めていて、まともに授業を受けている様子はなかった。

窓の外を眺めているのは珍しいことではないが、やはりいつもとどこか違うのだ。

放課後、今日はわたしが掃除当番の日だった。

こんな日に限って、どうして掃除当番なんだろう。

早くタケルと話しがしたいのに。

タケルは「玄関で待ってるな」と言うと、匡人と涼と共に教室を出て行った。

「いいよね、しずくは〜。モテモテでかっこいい彼氏でさ〜。裕太も日下くんを見習ってもらいたいわ〜」

モップを動かしながら麗佳が言う。

モップを動かしているものの、全く綺麗になっていない。

「なんだよ、それ!俺だってかっこいいじゃん!日下を見習うとこなんてねーよ」

「何言ってんのよ。少しは日下くんみたいにクールで優しくなったら?裕太は騒がしいだけよ」

「そんなこと言って、そーゆう俺が好きなくせに!」

「調子乗ってんじゃないわよ、バーカ!」

いつもの麗佳と佐野くんのやり取りも程々に聞き流し、わたしは掃除を急いだ。
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