月と太陽
「ここって、立ち入り禁止なんでしょ?入って怒られないの?」

わたしはフェンスに寄りかかる涼に訊ねた。

涼のパーマがかった茶髪が風になびく。

「平気さ。ここは誰も近寄りたがらない。先生たちですら、怖れてる」

涼は落ち着いた声で言った。

「怖れてる…?」と、わたしは眉間にシワを寄せる。

「この屋上には、女の霊が出るって噂があるんだ」

怪しく微笑みながら涼はそう言った。

すると、不意にわたしの肩に何かが触れる。

わたしは必要以上に驚き、身を縮めた。

見上げると、そこには悪戯に笑う匡人の姿があった。

わたしは彼を睨みつけた。

ふと横を見ると、わたしと匡人のやり取りを眺めて静かに笑うタケルの姿が目に映った。
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