月と太陽
梨子は、わたしと匡人のやり取りに嫉妬したのか、匡人の腕に自分の腕を絡ませ、ピッタリとくっついた。

まるで「匡人は、わたしのものよ」と言っているように見えた。

「それって、ただの噂でしょ?」

わたしは話を戻そうと、涼に訊いた。

「1年の頃からここを使っているけど、女の霊なんて見たことないよ」

「よかった〜」

ただの噂話と確認できて一安心。

空を見上げた。

青空に薄い雲が漂っている。

ここはとてもいい場所だとは思ったが、わたしが来るのは図々しいように感じた。

まだ彼らと知り合って日が浅い。

彼らは、いつからの仲なのかは知らないが、高校以前からの仲なのは確かだ。

そんな中に急にわたしみたいな女が入ってきて、梨子が気を良くしないのも当然かもしれない。

わたしが仲間に入りやすいように、気を使ってくれているタケルの優しさは嬉しかった。

でも、上手く溶け込めていない自分がいた。

今までもそうだった。

わたしは、心から信頼し合える友達ができたことがない。

なぜかいつも、仲が良かったはずの友達に裏切られて、傷ついて、そしてひとりぼっちになる、その繰り返しで生きてきた。

また今回も同じことを繰り返すに違いない。

そう思うと、タケルたちとの付き合いをためらおうとする自分がいた。
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