月と太陽
「夜、出歩くなんて危ないからやめなさい!遅くても6時までには家に戻るのよ、いい?わかった?」

強い口調でママは言う。

わたしは反論せずにはいられなかった。

「普段放置してるくせに、なにそれ!学校が終わったら、大人しく家に居ろってこと!?ママは好き勝手に出掛けて、帰って来ないことだってあるくせに!」

わたしが言い返したことにママは驚いている様子だった。

驚くのも無理はないかもしれない。

わたしは今まで、自分の気持ちをママにぶつけたことはなかったから。

「マ、ママは大人だからいいのよ!しずくは、まだ高校生でしょ!ママはしずくが心配なのよ」

「心配」という言葉が嘘に聞こえて仕方が無い。

本当に心配なら、1人娘をこれほどに放っておくわけがない。

ママは自分中心に物事を考えている。

だから、彼氏の側に引っ越したり、毎日彼の家に行っては、朝方着替えにだけ帰宅して、すぐ仕事に行くような生活を送っているのだ。

だから、いつも大人しく家に居るはずの娘が不在だったのが気に食わないのだ。
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