月と太陽
「しずく!」

わたしの名前を呼んで、亜利沙はわたしに勢いよく抱きついた。

わたしは驚きのあまり動くことが出来ずにいた。

亜利沙はわたしの身体を解放すると、わたしの二の腕を掴んで、心配そうな表情を浮かべた。

「心配してたのよ!学校ずっと休んでるんでしょ?何があったの?」

二の腕を掴む亜利沙の手に力が入っているのが伝わってくる。

わたしは、何かを話そうとしたが、うまく言葉が出てこない。

家に引きこもって、「話す」という行為を眠らせていたせいだろうか。

「こんなにやつれちゃって、美人が台無しよ。うちにいらっしゃい」

亜利沙に手を引かれ、何も考えず手を引かれるがままに歩いた。

でも一つだけ思ったことがある。

こんな姿、タケルには見せたくない。
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